OKI本庄工場H1棟 地域資源
OKI本庄工場H1棟



地域材を取り入れ文化歴史風土をつなぐ
埼玉県本庄市は古くは江戸時代から中山道の陸路と利根川の水路によって中山道最大の宿場町として栄えました。明治時代からは鉄道が開通し、生糸や絹織物産業が盛んとなり、日本の近代化を支えてきました。
本工場では時代の移り変わりにより失われつつある「本庄絣」「児玉瓦」「煉瓦」といった地域素材・伝統的な建築様式を取り入れ本庄の地域の魅力を各所にしつらえることで、次の時代に歴史をつなぐとともに、地域に愛される工場を目指しています。
本庄絣
かつて絹産業が盛んだった本庄市で、農家の副業から始まったとされる太織りの絹織物
県の伝統的手工芸品に指定されています。多様な絣糸の技法で、他産地にも例が無く、単純な絣柄から巧緻をきわめた絣模様まで絹の風合を生かした手作りの紬として幅広く展開しています。
織始めるまでに図柄を考え、型紙を作り、糸の染色部・無染色部を決めるなど下準備が大切な手間のかかる織物です。本工場では本庄絣の根幹技術である縦糸・横糸をモチーフとしたデザインコードを採用し、空間に優しさと伝統を与えることで、地域に根付いた工場を紡ぐ計画としました。



建設残土を使用した煉瓦と児玉瓦



伝統的建築工法を用いた断面計画
本庄市児玉郡には養蚕業が栄えた名残から高窓の住宅が見られます。床下から外気を取り込み高窓から排気し、建物の温度を調整する伝統的な建築工法を本工場にも採用し省エネルギー性に配慮しています。生産エリアは生産機器の局所排気が多く高天井であるため気積が大きく、一般的な事務所に比べて換気量が非常に多くなります。そこで換気による外気熱負荷を低減するため、クールピットによる外気の予熱・予冷を採用しています。

「埼玉県指定有形文化財 競進社模範蚕室修理工事報告書」
埼玉県教育委員会刊、1981年の内容から丸谷博男が制作したイラスト、コア東京2018年3月号より転載
クールピットは年間を通じて季節による温度変化が少なく、免震ピット内を通過した外気を外調機に取り込むことで年間を通じて安定した外気を取得することができます。
免震ピット内は温度・湿度を常時計測しており、雨天等でピット内の環境が外気と同等になった場合は自動的に外気を直接取り入れる方式に切り替えるシステムを採用しています。
